カーチャの冒険40話
Writer,Art:GEN
「猜疑」
あるとき、おばあさんが訊いてきました。
「街では、まだテロが起きているそうだけど、危なくないのかい?」
どこかで噂を聞いたらしいのですが、娘が街に住んでいるので心配なんだそうです。
私たちは、少しドキリとしました。
「滅多に起こらないんで大丈夫です」と、答えました。
また違う日、おばあさんは、大きな川の鉄橋の事件についても訊きました。
あのテロは、セルゲイたちがやったものです。
私たちは、おばあさんが、何か私たちについて気が付いているのでは、と思いました。
とりあえず、新聞に載っているぐらいの話をしておきました。
またあるとき、今度は、将校クラブについて訊いてきます。
私たちは、凍りつきました。
なぜなら、そのクラブは、私たちが逃げてきたクラブだったのです。
追い詰められた気がしました。
シューラは、一か八か、ダルコの名前を出してみました。
レジスタンスの仲間の中で、この村によく来ていたのが、ダルコだったからです。
おばあさんは、何も知りませんでした。
おばあさんがレジスタンスの協力者だと思ったのは、私たちの勘違いだったようです。
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