移動中、イゴールが目立つので、私たちは荷馬車を手に入れ、
その荷台にイゴールを隠しながら進むことにしました。
イゴールは、警察に会ったら農家だと言えと教えてくれました。
そして、荷台には、「干し草の下段には、堆肥を練ったものを寝かせてあります」
と答えろと言いました。
私は、シューラと居たときにもやったことのない大役に、必死になって言葉を覚えました。
そして、しばらくすると、本当に警察の検問があり、私たちは止められてしまいました。
私はしつこく質問され、
「何処から来た」に「あっちから」、「何処へ行く」に「こっちへ」、
という感じで答えていると怒られてしまい、
「仕事は何だ」には、用意していた「農家」という嘘を答えると、とたんに緊張してしまい、
「荷台の中身は」の質問のころにはピークになってしまい、上手く口が回りません。
動揺のあまり「ほっほっし・・・、げっげぇー、は・・・、たいひﾝ・・・ねっねつ・・寝かせてあります」
と言ってしまうと、
「何？ 発疹が出てゲーゲーで、大変熱があって寝かせてる？」
「おいっ！！ 大変だ！！ チッ、チフスだぞ！！」「うわっ！！」
「こっち寄るなっ！！」「え～～い、行け行け！！」と何故か通らせてくれました。
イゴールは偶然だと言いますが、一生懸命言葉を覚えてよかったです。